【思想新聞4月1日号】
地域を共産勢力から守ろう
統一地方選/暗躍する文化共産主義勢力
危険な「無党派」の動き/「革新」再来を企図する
【ポイント】
今夏の参院選の前哨戦と位置づけられる統一地方選挙が始まるが、今選挙の意義はきわめて大きい。それはわが国が真の国作りに向かえるのか、それとも左翼リベラル政策の徘徊を許すのか、分水嶺に立たされているからだ。とりわけ、昨年来の地方自治汚職による政治不信の拡大で一部地域では無党派が風を起こしつつある。警戒を要するのはその背後に文化共産主義勢力が蠢(うごめ)いていることだ。
【本文】
統一地方選はまず4月8日に東京や神奈川、北海道など13知事選と茨城、東京、沖縄を除く44道府県議選、政令市の4市長選と15市議選の投票が行なわれ、ついで4月22日に254市区町村長選と779市区町村議選が行なわれる。
今選挙は一昨年の保守圧勝の衆院選とはまったく違った政治状況になっているのが特徴だ。安倍政権の支持率が低下、それに伴い国民の政治意識に変化が出始め、保守陣営にとっては厳しい選挙戦になる見通しだ。
とりわけ政治不信の広がりが懸念される。昨年、福島、和歌山、宮崎の前知事がいずれも談合汚職で逮捕され腐敗構造が浮き彫りになり、今年1月の宮崎県知事選ではタレント候補が当選、政治不信が噴出してきた。
それだけに戦後の地方政治の教訓を想起しておく必要がある。
■革新自治体で支配許す教訓
その第一は政治腐敗などの政治不信が起こると必ずと言ってよいほど共産勢力に付けこまれることだ。
「革新自治体時代」の幕開けとなった1967年4月の美濃部革新都政の登場は、伏魔殿都政と呼ばれた汚職の続発、さらに66年末の国会の「黒い霧解散」の影響を受けた結果である。
70年代に大都市を中心に「太平洋革新ベルト地帯」が生まれたが、そうした革新自治体下では共産勢力の党派的な施策が採られ、「都市を占拠し国家権力を包囲する」(飛鳥田一雄横浜市長=後の社会党委員長)といった自治体の「革命の砦」化が図られた。
共産府政と呼ばれた京都府の蜷川府政下では、「住民の要求を行政に大衆政治方式としてぶっつけていくかたわら、部落に『赤旗』を購読させ、主婦たちのための憲法の学習会を開かせ、党勢拡大」(灘井五郎・元共産党府議=『議会と自治体』70年11月臨時増刊)するといった露骨な共産党の活動がまかり通った。
また「福祉の美濃部」を標榜した美濃部革新都政は「バラマキ福祉」を止めず結局、3期12年を終えた79年には約4兆2千億円もの借金を抱え、その後の都政を停滞させた。さらに一人でも反対があれば建設しないという「橋の哲学」を掲げ道路などの基盤整備を怠り、今も首都は交通渋滞に陥れられている。
■税金で左翼支援した美濃部都政
それだけでなく美濃部都政下では共産勢力への肩入れが盛んに行なわれ、例えば彼らの住民運動を支援するために都民生活局に「参加推進部」まで設けられた。
その典型的な行政支援が「クロム汚染」対策だった。77年12月に江戸川区や江東区で日本化学工業の「クロム汚染」が問題になると美濃部知事は「住民参加による日本化学工業対策会議」を発足させ、参加推進部に支援させたのだ。
同会議は地元住民や被害者団体、住民市民運動団体、学識経験者、地方自治体などで構成するとされていたが、実際の参加者には地元住民が極端に少なく、江戸川区や江東区は健康調査で被害が出ておらず、「クロム汚染は運動のために作られた偽装公害」として不参加したほどだ。
それにかわって川崎市の「クロム被害研究会」、逗子市の「日本から公害をなくす研究会」など他地域の共産党系や過激派など32団体が参加し、その中には「日本化学の対韓国公害侵略阻止明治大学闘争委員会」という公安当局のマークする極左集団も入っていた。
参加推進部は78年度予算に同会議運営費として1千6百万円を計上、これらは左翼集団のビラ代や活動費としてすべて使われた。左翼勢力はこういう「甘い汁」をもう一度吸おうと今選挙での自治体奪還を虎視眈々と狙っている。
■無党派知事で地方行政停滞
戦後の地方政治の第二の教訓は、政治不信が強まると政策よりもムードに流され無責任な無党派知事の出現を許したことだ。96年の統一地方選で東京に青島幸男氏、大阪に横山ノック氏の無党派タレント知事が誕生し、さらにその直後の参院選では共産党旋風が吹き荒れ同党は8百万票台を獲得して大躍進した。
これは無党派タレント候補やラジカルな反対党が政治不信の受け皿になった典型的なケースと言える。青島氏は「世界都市博中止」を掲げて当選したものの、確固たる東京ビジョンがなかったため官僚主導都政に終始し結局、同都政は「停滞の4年間」と称された。
今回の統一地方選もこうした無党派の動きに警戒が必要だろう。大都市部ほど政治不信票が無党派に流れる傾向があるだけに、とりわけ首都・東京の動向が懸念されるところだ。
■文化共産勢力に担がれた浅野史郎氏
左翼の標的にされているのが石原都政である。石原都知事は公立学校での国旗掲揚・国歌斉唱の職務命令を徹底させ違反者を厳しく処分、また過激な性教育を是正するなどジェンダーフリー教育にも歯止めをかけ、さらに警視庁と連携して治安再生に成果を挙げ、自衛隊との防災訓練にも積極的に取り組んだ。
このような姿勢は左翼勢力にとってはことごとく「反動タカ派」路線と映り、今都知事選を石原都政打倒の絶好の機会と位置づけている。
とりわけ、文化共産主義勢力は無党派を隠れ蓑に石原打倒を目指し、前宮城県知事の浅野史郎氏を担ぎ出した。2月25日に都内で開かれた「浅野さんのハートに火をつける会」で浅野氏は出馬を決意したと伝えられるが、この会は文化共産主義勢力の結集体で呼びかけ人や賛同人に彼らが名を連ねている。
それは長良川河口堰闘争グループの学者、ジェンダーフリー論の元女性都議、「日の丸・君が代」不当解雇撤回を求める被解雇者の会、中国人民に謝罪する中国帰還者連絡会、草の実九条の会、土井たか子を支える会、全国フェミニスト議員連盟、戦争への道を許さない女たちの会などのメンバーたちである。
■文化共産主義の条例化を狙う
こうした勢力は教育再生策の骨抜きを狙っているほか、さまざまな文化共産主義施策の条例化を目指している。いずれも文化共産主義勢力の目標となっているもので、都政だけでなく全国各地で導入を企図している。
彼らは「自治基本条例」を作らせ、これを足場に「住民団体」と称して行政に介入し、ジェンダーフリー(性差否定)の「男女共同参画条例」、子供の自己決定権の「子供権利条例」、人権擁護を口実に保守言論を弾圧する「人権条例」、地方行政の乗っ取り区を画策する「行政事業評価条例」や「会議公開条例」などの制定を狙っている。
さらに共産党や社民党などの既成政党とも連携して「無防備条例」や「非核反戦条例」といった反米・反自衛隊の条例を制定させ、国民保護法に基づく保護計画の作成や非難訓練などを阻止しようとしている。
また、在日米軍基地の移転に反対したり原発の推進を止めるために「住民投票条例」の制定を目指している。昨年3月には岩国市でこうした住民投票が行われたが、他地域から活動家が大挙、市内に入って扇動した。同条例はいつでもこうした住民運動ができる体制作りのために不可欠と考えているのだ。
左翼勢力の地方自治浸透工作は執拗かつ巧妙に各地で展開されている。統一地方選を通じて首長や議員を獲得して、文化共産主義施策を地域に押し付けようとしている。身近な地域でそうした暗躍がないか、注視せねばならない。
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