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  2006-12-05 宮崎勤事件の教訓

宮崎勤事件の教訓を忘れるな

野放し有害情報で幼女が犠牲に

 

 88年から89年にかけて東京や埼玉で4人の幼女を連続して誘拐・殺害した宮崎勤被告の死刑判決が06年1月17日、最高裁でようやく確定しました。事件発生から17年。実に時間がかかった死刑確定です。この事件の後、類似した事件として神戸少年事件や奈良少女殺害事件などが起こり、その都度、「有害情報」と「家庭崩壊」が問題にされてきましたが、それにもかかわらず、社会は手をこまねき続け、05年秋には広島と栃木で相次いで小1女児殺害事件が発生しました。死刑確定を契機に改めてこの事件の教訓を確認しておきましょう。

 

[宮崎勤死刑囚の犯行と裁判の経緯]

 4歳から7歳までの幼女4人を次々と誘拐して殺害、遺体をビデオに撮影し、「今田勇子」の女性名で犯行声明を被害者宅や新聞社に送ったほか、被害者宅に遺骨入りダンボールまで送りつける−。犯行当時、26歳だった宮崎勤被告の犯行は残虐、異様をきわめました。

 88年8月に埼玉県入間市で最初の幼女が犠牲になり、翌年7月に東京都八王子市で娘にわいせつ行為をされた父親が取り押さえ現行犯逮捕されるまで、実に11カ月かかりました。取調べに宮崎被告は「捕まらなかったら、この先何人誘拐したか、わからない」と供述し、国民を震撼させたものです。宮崎被告の自室はビデオテープやコミック本で埋め尽くされていました。ビデオは5787本にのぼり、ビデオの世界に入り込む「おたく」と呼ばれました。この部屋で幼女の遺体にいたずらし切断していたのです。

 1審、2審でいずれも死刑判決を受けましたが、弁護人らは再三、精神鑑定を求めて裁判を長引かせてきました。最高裁は「犯行を重ねるほどに計画性を強めており、各殺人の主たる動機は、性的欲求や死体等を撮影して自分だけの珍しいビデオテープを持ちたいという収集欲に基づく自己中心的かつ非道なもので、およそ酌量の余地がない」として、裁判官4人全員一致で2審の死刑判決を正当としたのです。これで宮崎被告の死刑が確定しました。当然の判決と言えるでしょう。

 

[性情報氾濫で快楽殺人が横行]

 この事件を岩井弘融・東洋大名誉教授は「@幼児性愛者による犯行A虚構と現実の垣根を越えたところで起こった事件−という2点で、それまでにないタイプの事件が続発する幕開け的な意味合いを持った事件だった」と述べています(産経新聞06年1月15日付)。事実その後、97年には神戸市で14歳の中3男子が小4女児と小6男児を殺害、遺体の一部を中学校正門前に置き「酒鬼薔薇聖斗」名の挑戦状を残す事件を起こすなど、ポルノ・ホラー映画や残虐ゲーム、有害ネットなどに触発された「性的妄想が膨らんだ末の快楽殺人」(小田晋・帝塚山学院大教授)が相次ぐようになったからです。

はたして17年間、残虐な性犯罪から子供たちを守るために社会は何をしてきたのか、改めて問われています。第一には「有害環境」をそのまま野放しにしていることです。宮崎死刑確定を伝える新聞報道でもこの指摘が際立って多いことが注目されます。

作家の高村薫氏はこう述べています。

「(宮崎被告が)こっそり楽しんでいた世界が、今では日常の隣にある。これが17年の間に、私たちが作り上げてきた社会だ。この間、どれだけ同様の事件が起こり、どれだけ子どもや女性が犠牲になってきたか。危険は通学路にあるのではない。子どもを大人の性欲望の対象にしないという良識を捨てた。何でもありの社会自体が危険なのだと思う。表現の自由や、情報化社会の名のもとに誰もが黙り込む社会の『不作為』が、子どもを犠牲にしている」(朝日新聞06年1月18日付)

映像の刺激におぼれ、そこに閉じこもることを加速させる社会の是非を問い直さなければ、私たちは宮崎事件から何を学ばなかったことになる、と高村氏は警鐘乱打しているのです。

日本経済新聞編集委員の坂口祐一氏もこう指摘しています。

「宮崎事件当時指摘されたように、わいせつビデオや残虐なゲームに犯罪を触発、助長する面があるとすれば、現在、状況ははるかに悪化している。ネット上には有害な情報があふれ、児童買春など子どもの性を商品として扱う傾向も一層強まった。子どもを守ろうという機運が高まる一方、社会全体で見れば、子どもを落とし込む『闇』を大人が際限なく広げ続けている。…驚愕すべきは(宮崎被告個人ではなく)宮崎被告を生み出すまでに変質した社会の在りようそのもののはずだ」(日本経済新聞06年1月18日付)

読売新聞の連載記事『問い直す宮崎事件』(06年1月1416日付)によると、東京・秋葉原のアダルトソフト店はDVDに出演している小学女児の「握手会」を日曜午後に開き、その店では成人女性のレイプや監禁をテーマにした作品を販売。別の店ではパッケージに「街で出合ったかわいい少女を言葉巧みに連れ去る。少女誘拐暴行犯…それはあなたです」と記されたパソコンゲームもありました。秋葉原にはアダルト向けのDVDやゲーム、漫画の販売店は60店以上にものぼり、「少女・幼女もの」と表示された欄には100種類以上の漫画が並ぶ店もあると言います(06年1月16日付)。

中央大学教授(犯罪学)の藤本哲也氏は、子どもを狙う異常犯罪が相次ぐ一因に「宮崎事件の時に手を打たないまま、性情報が世界に類の見ないほど拡散したこと」を挙げ、「趣味が危険な行為に結びつくことを防ぐための規制が必要だ」と指摘しています(同)。また小田晋氏は「小児性愛の傾向を持つ人間は、映像情報から犯罪のイメージを作り上げる。宮崎事件の当時はビデオくらいだったが、その後のインターネットや携帯電話の普及が、同種犯罪の増加を促している」(読売新聞06年1月15日付)としています。

毎日新聞は06年1月18日付の「類似犯防ぐ環境整えよう」と題する社説で、「1、2審の審理でも犯行とビデオとの相関関係は解明されなかったが、専門家は、映像は性的欲望を刺激して性犯罪を誘発する、とポルノビデオの横行に警鐘を鳴らした」として、次のように訴えています。

「(性情報氾濫は)悪化の一途をたどっている。宮崎被告の事件当時はビデオと雑誌が主な媒体だったが、最近はDVDもあれば、インターネットを通じて携帯電話でもポルノ画像を容易に入手できる。レイプや監禁、暴行をテーマとしたアニメやゲームソフトも堂々と販売され、売れ行きを伸ばしているのが実情だ。…野放し状態に近いアニメや漫画も含め、犯罪行為を正当化するような映像やゲーム類は、社会を挙げて一掃する方策を講じる必要がある」

有害情報を一掃しなければ宮崎事件の再発を防げないのです。ここからも青少年健全育成法の制定が不可欠と言えるでしょう。

 

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